夏山集中登山

北アルプス
白馬〜日本海(栂海新道)


朝日岳山頂で記念撮影

 報告者   :  佐々木秀夫 
 山  名 北アルプス白馬〜日本海(栂海新道)  山行名 夏山集中登山・飛騨山脈
 ルート

白馬栂池高原―白馬大池山荘(1泊目)―三国境―雪倉岳―朝日小屋(2泊目)―朝日岳―犬ケ岳―栂海山荘(3泊目)―白鳥山―坂田峠―尻高山―二本松峠―親不知登山口

 山行日  平成23年7月29日〜8月1日  天候 4日間とも雨・時々・曇り
 参加者

リーダー:佐々木    サブリーダー:山口  会計;濱北
男性:5名  中島・金本・柴垣
女性:11名  堀尾・染矢・河合・吉津・大谷・長野・吉野・岸田・東・清水
合計:16名 


 

雲上の北アルプス3000mから日本海の0mまでを行くのキャチフレーズに誘われて

 

世界遺産大峰山地を20084月から3回シリーズで吉野から熊野まで縦走した時、厳しい大峰山脈の修行道と山容の変化と自然との融和に素晴らしい感動覚えた。その後、2008年7月・白馬三山から不帰の嶮・五竜山荘まで縦走(佐々木担当)2009年の夏山では針の木岳から五竜岳までの後立山を縦走(佐々木担当・悪天候で鹿島槍ケ岳で断念)した。翌年の2010年の夏山では南アルプス・北岳から農鳥岳の縦走(中島さん担当)と夏山縦走の醍醐味を味わった。2011年の夏山集中登山はと??・・・・思案の末、飛騨山脈(北アルプス)の未知の秘境、朝日岳から親不知までの約27Kmに及ぶ栂海新道を7月の例会として山行計画に組み入れてもらった。

飛騨山脈は日本海親不知から南は乗鞍岳・御岳に続く日本列島を横断する大背骨の120Kmにも及ぶ山脈で、岐阜・長野・富山・新潟県の4県にまたがる山脈は飛騨帯といわれる複雑な地形、地質が面白く、急激な隆起運動と火山噴火による構成で3000mの高みまで造山したもので、高山景観では最も優れた山岳といえるのではなかろうか。

栂海新道の事を知ったのはもうずいぶん昔になる。封印をしていたピッケルをとりだした停年間近で山を再開して、がむしゃらにYさんに付いて東北の9名座を目指していたころ、車で親不知、子不知の断層絶壁を通った時、日本海へ落ち込む飛騨山脈の朝日岳から未知の山々を聞き、不思議な興味と、憧憬を感じたものだ。親不知は『親知らず子はこの浦の波まくら越後の磯の泡と消えゆく』という悲劇の歌から命名され、国道が開通するまでは交通の最大の難所であった。道路が開通し、その完成を誇る「砥の如く、矢の如く」という碑が建っている。ウオルター・ウエストンの「日本アルプス・登山と探検」第11章にもアルプス全山を北から南へ横断することで、山系の主な特徴を正く把握したいと書かれている。親不知を訪れかなりの興味を持っていたことがうかがえる。

1971年「さわがに山岳会」のみなさんによる飛騨山脈北延主稜線の登山道が苦難の末開設された。雲上の3000mから日本海の0mまでの長大な縦走路を歩きたいとの願望が募り、資料を調べているうち、この山域の変化にとんだ高山植物、高層湿原、地形、地質、造山のタイムラグ等など、一大宝庫と知り是が非でもと夏山集中山行として計画、実施した。

 

実施日の長野・新潟・富山県地方の週間天気予報は芳しくなく、一時中止も考えたか、SLや関係者と相談の上、雨中山行を覚悟の上実行に移した。

1日目 7/29() (天候曇りのち雨) 京田辺(5;30)・・栂池高原・・・(12:00)栂池自然園(12;30)・・4:00・・(16:30)白馬大池山荘() 歩行距離3.5km (歩行時間約4時間)

 

栂海新道参加者16名と白馬三山縦走参加者6名の22名で白馬大池山荘まで行く。

栂池ビジターセンター登山口から雨具を着けての幸先の悪いスタートで、この先の長い行程が

心配される。天狗原の地塘を経て、残雪を注意深く横断、乗鞍火山の外縁の輝石安山岩の岩塊を登りきると道は緩やかになり、やがてケルンの広場に着く。風と雨が強くなり、休む間もなく白馬大池山荘に向かう。初日から黙々と忍耐強く進行を余儀なくされて、全員無事、白濁の霧の中の山荘に到着する。

 
2日目 天候 (霧・曇り・雨)7/30() 白馬大池(4:00)・・(7;10)三国境・・雪倉岳(12;00)・・水平道・・(15;40)朝日小屋() 歩行距離15km  (歩行時間約12時間)

 

4時出発、天候は最悪である。霧が立ち込め全山を覆い尽くしている。登山道を照らすヘッドライトも心もとないが、2007年7月ここから白馬岳・杓子岳・白馬鑓ケ岳の三山を経て,不帰の嶮を慎重に通過、唐松岳から五竜山荘まで縦走したので、迷うことはなかった。二重山稜が点在する小蓮華山には大日如来像が安置されているが、ここも急峻な崩壊岩壁で信州側に数メートル陥没しているといわれている。2007年7月にここを通過したときに転がっていた鉄剣は、今、凛として建てられていた。三国境までは順調に進行した。6名とはここで別れ、私たちは雪倉岳から朝日岳に道をとった。雪倉岳は高山地形研究のルーツと言われていて、日本で最初に氷河地形の研究がなされた山で、典型的な非対称山稜、二重山稜(線状凹地)の発達が多く、頂上の北東側には氷河期のカールがあるという。不毛な流紋岩や蛇紋岩で構成されているため、砂礫帯にはコマクサやチョウノスケソウの群落があるというが、この視界が50m位じゃその期待はゼロであろうと諦めての歩きである。   三国境から降ると、流紋岩の砂礫地が広がり、それでもコマクサの群落が見れてよかったし、展望は開けないが、高山植物が多く確認できたのは雨中山行では幸運だった。鉢ケ岳の裾を巻き、非難小屋を過ぎ、何度か雪渓を横切り、お花畑を闊歩しながら登降を繰り返し、雪倉岳山頂に到着したが、此の山の重厚さを目ではなく歩行で感じた次第だ。好天なら自然学習(周氷河地形・地質、線条土・高山植物)の絶好の教材と楽しみにしていたが残念だった。朝日岳直下の分岐で水平道をチョイスしたが、この選択は失敗だった。木道・残雪と実に歩きにくい地形に加え、アップ・ダウンの多い、しかも長い長い道程は、2.7km表示があったがそれ以上に感じた。天は動揺し、ガスは雨滴となり、視界は遮られ、ただ黙々と足元を見つめ、歩けど歩けど道を短縮できぬもどかしさを、忍耐と我慢の時間を経て、朝日小屋に到着した。

山小屋で一通りの手続きを終え、オーナーの「清水ゆかり」さんと、少し雑談した。予約時、弁当、人数の変更・変更、果ては宿泊・素泊の形態等の変更・変更でご迷惑をかけた。

話が栂海新道に触れ、白鳥非難小屋か、栂海山荘かとアドバイスを乞うと、白馬〜朝日までの所要時間を聞かれた。12時間弱と云うと、即座に「白鳥は無理・無理」と言われた。コースタイムより遥かに険しい新道という。木道(スリップ)・大小の起伏(小刻みのアップ・ダウン)・荒れたぬかるみの道・それにこの悪天候と、16名と云う比較的多人数なパーテイでは栂海山荘が腹一杯という。「さもありなん』と納得した。其の他、水場やコース情報を得て夕食になった。私たちが今まで体験したことのない縦走路が、この先行く手をふさぐかと思えば、種々の資料からえた知識で企画したが、なんと配慮の無い計画だったろうと反省する。今更コースタイムに罪を科しても仕方あるまい。

朝日小屋の夕食は、ホテル並みでまことに美味で、皆さん満足されたことでしょう。雷雨の激しく通過する飛騨山脈の天候の無慈悲を恨みつつ就寝した。

第3日目天候 (霧・曇り・雨)7/31() 朝日小屋(4:25) ・・・(10;50)黒岩山・・・(15:30)犬ケ岳・・・(15;30)栂海山荘

歩行距離9km   (歩行時間約11時間)

小屋を出発する準備中にYさんの様子がおかしいという報告を受けた。フラフラして登山靴も履くことがままならぬ様子。事情を聞くと常備の睡眠薬の飲み過ぎという。本人は大丈夫というが、この先の困難な行程を考えると離脱して、睡眠薬から完全に醒めるまで時間をとり、北又に下ってもらうしかないと思った。同行者が何人か申し出てくれたが、本人が行くといって頑強に納得しない。朝日岳まで行って無理のようなら下山ということで30分程遅れての出発となった。空気の希薄な高所(2400m以上)においては睡眠薬の作用で呼吸が抑制される恐れがあり、非常に危険で、眠れないからと云って安易な使用は避けるべきであろう。自己管理は慎重にせねばならないと思う。案の定、睡眠薬が醒めぬ為かフラフラして8回程の転倒があり、幸い怪我はなかったが、本当にヒヤヒヤものでした。朝日岳の頂上で朝食にした。飛騨山脈の龍尾は霧の彼方の日本海に続いている。好天なら雄大な景観に目を見張るところだが、今日も無慈悲の霧と雨風ではいたしかたない。ただ、登りの途中で南側に白馬岳、剣岳の全貌が望めたし、雷鳥のツガイの道案内も受けたのがせめてもの救いであった。ここからは全く未知の世界である。刻々と変化する自然と融和し、精神的重圧から解放されるまでは心身とも頑張るしかない。

朝日岳北斜面の蛇紋岩の風衝帯を下ると吹き上げのコルで、ここは栂海新道の起点である。右は蓮華温泉に下る道である。左に大きな岩塊に赤く日本海の矢印が目につく。シラビソの樹林帯を抜けると木道があり、そこを渡り歩き、長栂山の周氷河地形の岩屑原の風衝帯を経て、雪渓を何度か横断し、地塘の点在する雄大な草原アヤメ平につく。多くの高山植物が群落を形成していて、国指定の特別天然記念物の桃源卿である。ヒオウギアヤメの花が心を癒やしてくれる。木道の下は泥炭で堆積層は比較的薄い。地塘、雪田、風衝地帯、草原では、数え切れないほどの高山植物の名が記憶された。

(『雲を呑み、風になめされ、太陽を食い、星よりも清純な高嶺の花が,千年の岩の斜面をちりばめている』会津八一)と云う最大の賛辞を贈りたい景観は、幻想の彼方で見ることができなく残念だった。

草原からまた樹林帯に入り、急坂になり、雪渓を横切り黒岩平の開けた広大な暖斜面の草原にでる。

草原から池に注ぐ冷たい水が美味い。大雪田には水芭蕉が咲き残り、次々とタイムラグで花が高山草原を彩っている。登山道はまだ雪が覆い隠していて対岸に渡るには霧の中では慎重に見極めなければならない。黒岩平を過ぎてニッコウキスゲの咲く斜面を登ると、中俣新道の分岐で、黒岩山は直ぐだった。文子の池で昼食にし、ここから起伏の多い灌木帯のササ原の尾根道を行くとサワガニ山で、非対称細稜が犬ケ岳の麓まで続く。鞍部には黒部川源流の北俣の水場がある。(往復10分くらい) 岩盤の中から湧き出る清水は冷たく美味しい。たっぷりと補給して急坂を登り、一つのピークに着き、ヤセ尾根を経て犬ケ岳の山頂に到着した。栂海山荘は直ぐ下ったところに建っていた。幾多の困難と気力で新道を建設したサワガニ会の人々の憩いの小屋に、今夜は私たちだけの宿泊となった。朝日小屋を出て約11時間余、今日も過酷な試練の一日であった。せめて天候が・・・・・

深夜小屋の外に出てみると糸魚川辺りか?黒々とした 峡間から街の灯りが輝いて見えた。また、西側の水平線辺りか、一直線に漁火らしき明りが灯って見えた。後1日頑張って歩けば、あの暖かい光の中に身を置くことができるのだと思えば、なんとしても無事で縦走し下山せねばならないとおもった。

 

第4日目 天候 (霧・曇り・雨)8/1() 栂海山荘(4;00)・・(5;50)黄蓮水場・・(6;50)菊石山・・(9;30)白鳥山・・(12;30)坂田峠・・(13;30)尻高山・・ (15:40) 親不知登山口 歩行距離12km (歩行時間約11時間)

 小屋の横から急峻な下りだった。黄蓮山を過ぎ菊石山との乗越しに至ると黄蓮の水場がある。ブナ林の中で朝食にする。日本海特有の天は刻々と動揺し、霧は舞って山を駈け上り、また強い雨となって駆け下り、地上を容赦なく支配する。私たちと云えば、ただ黙々と疲労と戦いながら山を登り、そして下り、徐々に高度を下げ日本海に向かって歩く。

山を越え また青垣の山越え 行けども 行けども 日本海(うみ)は遠し    ひでを

飛騨山脈の地質は、黒岩山から以北は、白亜紀やジュラ紀の堆積岩から構成されているといわれていて、地質時代からいえば、中生代のアルプス変動期に位置し、1憶5千万年前の生物アンモナイトや二枚貝の化石が発見されたという。下駒岳の崩壊地を過ぎると、正面にうっすらと白鳥山が見える。小さなピークを乗り越え、白鳥の山頂にやっとの思いで登りつく。新道の稜線は富山県・新潟県と両県を跨ぎ通過してきたが、ここからは新潟県だ。弱音を吐かず、けなげに頑張る「山友会ナデシコ・イレブン」の皆さんもかなりの疲労と足腰の痛みが極度に高まっているだろう。この場所が唯一の携帯電話の通じる所で、坂田峠には車も呼べるので、希望者は?と問いかけても、誰も手をあげない。坂田峠〜日本海親不知までは更に4時間(コース・タイム)程かかるのだが、やはり頑張って日本海まで行くという。イレブン(11)の皆さんは持久力があってガンバリ屋だ。凄い。完全に脱帽でした。   白鳥山から急坂を坂田峠まで一気に下る。坂田峠は旧北陸街道で近郊の古生代地層からはヒスイ、金などの鉱脈が発見され、古くから随分と賑わっていたという。

峠〜尻高山の緩やかな登り道で、ヘリコプターの飛来を見た。方向から見ると栂海新道の上空を辿って飛んで来ているように思えた。時計を見ると新潟県警に届け出た登山計画書では、下山時刻を過ぎている。「さては捜索機か?」と要らぬ心配をした。私たちの上空から旋回して東に飛んで行った。携帯(電波が弱く直ぐ途切れる)の通じる尻高山の手前で、山行部長・北村さんに下山時刻が遅れていること、15時過ぎには親不知に着く予定であること、県警にはとりあえず「現在地と無事下山中」であること、の一報とお願いした。二本松峠で再び車道を横断する。416mのピークから更に0mまでの極端な下りは、もう足腰が限界を超えていた。木々の間から国道を走る車が見えた時は、ほっとした。これで種々の重圧から解放されたと思った。更に栂海新道登山口の標柱に触れ、やっと役目が終わったと安堵した。と同時に今まで感じたことのない達成感がこみ上げてきた。ホテルと入浴などの交渉をしていて、0mの海岸線には立てなかったが、凝灰質角礫安山岩に刻まれた「砥ノ如く矢の如し」の銘は親不知の誇りでもあったろうと推察された。

京都田辺山友会に入会して多くの山岳に挑んだが、今回の栂海新道の山行は、悪天候・がれ場の道・ぬかるみの道・滑る木道等の悪条件もあって、実に過酷な厳しい試練を体験したベスト・ワンにランクされるものであったと思う。その反面、最後の秘境とも云うべき自然の宝庫は、素晴らしいものがあったとも思う。もっと立ち止まって花のこと、地質のこと、糸魚川、静岡構造線による飛騨山脈の造山運動や、地質時代ことを学習する時間があったらと思った。高村光太郎は『山に行ってなにしてくる。ただ、がぶがぶと水を飲んで帰って来る』と云った。山行日3・4日目は、まさにそんな厳しい状態だったと思う。正直まったく余裕のない酷いものだった。降雨時の例会山行実施には、もう少し慎重でなければならないことを反省している。しかし、これも自然から送られた試練の賜物だと思っている。それにしても栂海新道は遠く遠く長い道であった。

 

『その山行の評価は、参加者全員が無事下山することで決まる。楽な登山はない。過酷な条件では仲間同士がお互いに助け合い、信頼し合ってこそ、その達成感は大きくなるものだ。』と実感した。

 

SLの山口さん、会計をお願いした濱北さん、参加された皆さん、本当にありがとうございました。


感想文
 濱北 紀子
 

若いころ蓮華温泉から白馬大池・白馬岳へと登山した時、三国境から見た雪倉岳は夏でも真っ白にきらきらと輝き雪をかぶつたように綺麗でした。その後、例会で白馬三山縦走し不帰ノ嶮を勇気を奮って通過した時も、やはり三国境からの雪倉岳に興味を持ちました。

夏山登山で「かんなび」の山行案内を見て、是非参加したいと思いましたが、果たして皆さんについて行けるか不安でした。

天候は余りよくなく中止も期待していましたが、実施と決まり、一大決心で臨みました。

雪倉岳の雪のような白さは、流紋岩の砂礫地が日光に反射していると教えられました。

砂礫地にはコマクサの群落やウルップソウが咲いていました。まだ雪渓が残っていて横断するのに苦労しました。草地には多くの高山植物が乱舞していて、とても感激しました。朝日小屋までの道のりは、雨の中のぬかるみの道で、長い長い時間との戦いでした。朝日小屋に着いてほっとしました。3日目、朝日岳から栂海新道に入ると,地塘や草地に咲く花の多さに感激しました。霧の中の木道は幻想的で、雲上のお花畑に入るゲートのように感じましたが、スリップには細心の注意で渡りました。新道を進むにつれ、悪路は続き、疲労が蓄積し、必死で歩きました。起伏が多く、登降を何度も繰り返し、栂海山荘に到着しました。

最終日もまた霧と雨の天候で、急坂の下りから始まりました。靴の中も濡れ足のそこにできた豆が痛く、大変でしたが、白鳥山に登り着き、ここから急降下の山道で、坂田峠には車も入るので、坂田峠から車で親不知Hまで行きたい希望者はと、リーダーが心配してくれましたが、ここまで来たのだから、やはり頑張って日本海まで行こうと思いました。親不知登山口に着き、とても苦しい山行でしたが、やっと安堵感と「やった!」という達成感にひたることができました。海岸まで下り、広大な海を見ながら、北アルプス〜日本海までの約50kmの長い長い道は、行けども行けども目的地に着かないような遠さに想いを馳せ、自分の頑張りを褒めてやりたいと思いました。
 
 栂池から日本海へ
 山城・山の会  東 明美
 

テレビで「県境を日本海まで歩く取り組み【雪山】」を見てこのトレイルコースを知りとても興味をもち田辺山友会の例会に参加させてもらいました。飯豊連峰縦走以来2回目です。ロングコースになるのはわかっているのに体調が悪く6月中旬より「足首捻挫とぎっくり腰」でトレーニングがぎりぎりまでできず直前に染矢さんが赤兎山から三の峰・別山縦走に付き合ってくれて何とか「行けるかも」と思いました。しかし万全ではないので、途中で怪我して皆さんに迷惑をかけないようにとそればかりがずっと心配でした。

これまで経験の無いほどの4日間の雨の中のロングルートをひたすら遠い日本海めざして歩きました。おかげさまで滑ったりはしながらも怪我なく歩き通せて親不知の海にタッチできた時はほっとしてとてもうれしかったです。毎日10時間以上歩く本当に長い道のりでしたがいろんな経験をさせていただいて田辺の皆さんのパワフルさにただびっくりしておりました。重い荷物を持って雨の中を4日間歩き通すには一人一人がトレーニングを積んで体力や知識や経験を生かして総合的な山歩きの力が要求される事をあらためて実感できました。かわいい花や沢山の雷鳥に出会えて癒されながら歩けたことも楽しかったです。しっかりした計画や準備してくださった皆さん。前日に泊めて頂いた染矢さん。一緒に歩いてくださった皆さんありがとうございました。

 夏山の一言感想
 長野雅子
 

日本海まで栂海新道を行くの見出しにひかれて深く考えもせず参加した。

3日目が無人小屋泊、シェラフと食事3食分をもち歩かなければならない。いつも軽いリックを担いでいるので『不安!』頑張らないと。

連日雨の中を歩き、栂海山荘に着いたときは、一番悲劇な状態で靴下等滴がポタポタ足もふやけている。最終日はそっくり着がえて歩いたが、栂海山荘から親不知までの道のりの長かったこと、山を越えても越えても日本海が見えず、もう歩くのが嫌になった。

やっと目的地に辿りつき、海の水を触った時の達成感は、苦しかっただけに格別のものでした。とてもしんどい山行でしたが、谷筋には雪渓が沢山残っていたり、コマクサ、水芭蕉,キヌガサソウほか多くの花にも出会え、期待を裏切らなかったコースでした。(滑りやすい木道はヒヤヒヤものでしたが) 又、いつものことで申し訳なく思っていますが、水の確保やガスの準備等、皆さんにはなにかとお世話になり有難うございました

 栂海新道
 柴垣
 

白馬三山は学生時代の思い出での山である。ずいぶんと昔の話であるが、積雪期には杓子岳の双子尾根にある小日向山をベースに白馬主稜線や槍温泉を楽しみ、夏季には雪倉・朝日から、蓮華温泉へと足を伸ばした。しかし、そのときには、新道があったかどうかは定かでないが、親不知まで歩くなど考えたこともなかった。

 今回、白馬集中登山の案内をいただいたとき、栂海新道に強い興味をいだいて、足に不安を感じていたにもかかわらず、参加させていただいたが、親不知はとにかく遠かった。

雨に見舞われた12時間×3日間の行程と想像以上の悪路に、強い疲労感を感じて、お花畑を楽しむ余裕さえなくしたが、ご婦人方の強さと荒涼たる荒地に可憐な美しい花を咲かせるコマクサが私の背中を押してくれた。

このコースを楽しむには仲間の存在が不可欠である。とても単独でいけるコースではない。計画いただいた佐々木さん山口さんには、ただただ感謝!
 
 夏山を終えて一口感想と言われ頭に浮かんだ事は
 岸田歌寿美
 

(1)   一般参加の清水さんに元気の素(にんにく卵黄・コエンザイムQ10など)をいただき、10時間以上無事に歩けたこと。

(2)   雨の山行の中を、高山植物に和まされたこと。

(3)   栂海小屋で、染谷さんから二人一組で行う健康体操を教わり、疲れが癒されたこと。

(4)   4日目、先頭を歩いていた佐々木さんの心臓が悲鳴を上げ、どうなるかと心配したが、山口さんと先頭を替わられ、何事も無く下山することができ、ホッとしたこと。

最後に

栂海新道を日本海まで歩けるか心配でしたが、トレーニングの替わりに、北の又、白山「観光新道」に参加。

4日間、大変なコースを完歩出来ましたのもリーダー、サブリーダー、参加の皆様のおかげと感謝しています。有難うございました。今度は秋、天候に恵まれた時にもう一度行きたいです。
 
 もう一度歩きたい栂海新道 
 金 本
 

雨の中、歩行10時間以上3日間歩き通した。しかも登りは急斜面を直登し、下りは急降下。やせ尾根の岩稜歩き、特に犬が岳・白鳥山の登り・下りでは参った。疲れて二度と来るかと思いながら歩いた。靴の中まで水が入り、足はふやける、水ぶくれが出来て歩行が遅くなり、後ろの人に迷惑をかけた。われながら足腰の弱いことがわかった。

 しかし、朝日小屋の管理人(女)のテキパキとした親しみのもてるサバキ、豪華な夕食。栂海小屋での我々だけの小屋貸切の夕食、夜見た満点の星や山の上から見た糸魚川市街の明かり、冷たくて美味しかった北俣の水、稚児車・こまくさ・ニッコウキスゲなど豪華な高山花、滑ってこわごわ渡った雪渓、美しい池塘、つるつる滑った木道など変化に富んで面白い山である。心を和ましてくれた。

 家に帰ってから23日は足がはれて歩きにくかった。六甲縦走でも経験の無いことである。

 季節を変えて、もっとトレーニングを繰り返し、足腰を鍛えて、栂海新道をもう一度挑戦したい。

 
 栂海新道を経て日本海へ
 吉野美千代
 

楽しみにしていた夏山でしたが4日間共、雨でした。それでも2日間は景色が見えなくても

色々な花に心が和みました。さて私の失敗談についてですが、日頃から3年以上の不眠症に悩まされていました。当然出発前から眠れず、一泊目の白馬大池山荘では睡眠薬が効かず、それでもいつもの事なのであまり気にしませんでした。

二泊目の朝日小屋は2日間寝ていないので今日こそ寝ようと睡眠薬1錠を飲んだのですがやはり眠れず、24時頃起き出して自宅にいる時と同じように(3時起床の4時出発という事を忘れて)2錠目を飲みました。

しかしやはり眠れないまま出発になり、又、睡眠薬の影響で思考力が廻らずボーとして歩き始めました。リーダーが心配して下さいましたが、この周辺の山は朝日岳から針ノ木岳まで全部縦走しており、あと日本海の親不知に行くコースに是非行きたくて参加したのですから、私としては睡眠薬の影響は残っていますが体調が悪い訳でもないし、この先の山も岩場でない事も分かっていたので私の行きたいという思いを通させて頂きました。

その後はボーとしていたので滑ったり、転んだりがありましたがケガも無く段々、頭もはっきりして来たので無事、栂海山荘に着きました。

 その晩は精神をリラックスさせる薬が1錠有りましたので、それを飲んだところ少し眠れました。翌日はいつものペースが出て体力的には大丈夫でした。最後の日はアップダウンの長い行程でしたが、久しぶりに登り甲斐のあるコースにワクワクしていました。

肩こりの私はザックをおんぶして歩いていましたが、親不知に着いた時は皆で握手を交わしました。CLの佐々木さん、SLの山口さん、及び同行の皆様にはご心配とご迷惑をお掛けして又、いろいろお世話になり有難うございました。おかげ様で悔いの残らない山行が出来ました。
 
 夏山例会 [栂海新道縦走] に一般参加させて頂いて
 清水和子(一般)
 

アルプス最北部、朝日岳から日本海親不知海岸へ向けて真っ直ぐに北上する全長27Km 標高差2,500mに及ぶ1本の長大な縦走路。 地元の僅かなメンバー 「さわがに山岳会」の方々により10年の歳月をかけて開通した今年で40年目を迎える栂海新道。

 1日の歩行時間は長く、起伏も多く、アップダウンの連続。 体力、気力の試される山行でしたが、山友会男性5名+女性9名+一般女性2名=総勢16名全員ロングトレイルを歩き切った達成感! 至福の時を日本海親不知ヒスイ海岸にて満喫!!

 企画、準備、予約、催行全てにおいて多大な御労苦を戴きました CL佐々木様 SL山口様

会計濱北様 そして山友会の皆様に深謝。まさに「なでしこ山友会JAPAN」の結束力!「体力有限・気力無限」の証明! ひと際年長者の方々の強靭な精神力、頑張りに感服しかり!! 

深く心を打たれ、尊敬と憧れでとても心温かくさせて頂きました山行に感謝の気持ちで一杯です。

 お天気には恵まれなくても、水滴を含んで生き生きと色鮮やかに、厳しい環境にも耐え精一杯今を咲き競う可憐な花々に随分励まされました。本州にある高山植物のうち8割位の種類はこの白馬〜雪倉〜朝日岳周辺にあるそうです。 日々弛まぬトレーニングをなさる努力家の濱北様、超お勉強家で予習勿論復習も完璧の堀尾様、花博士お二人の解説付き。チングルマの群落に始まりイワギキョウ、ウルップソウ、イブキジャコウソウ、コマクサ、イチゲ、コザクラ、ニッコウキスゲ、クルマユリ、タカネマツムシソウ、シモツケ、イワイチョウ、水芭蕉、ヒオウギアヤメ、キヌガサソウ、タカネバラ、シャクナゲ、ハクサンシャジン、アズマギク、カライトソウ等々。 

雪渓、雪田、スノーブリッジ、木道、草原、湿原、地塘、ガレ場、鎖場、何でもあり。

朝日小屋の富山産食材での美味しい夕食。栂池山荘での自炊夕食後男性陣1Fにて爆睡中、2Fでは染谷様による健康体操教室実技指導付き。 疲れた身体に「う〜**よくきくう〜**」 お次は堀尾様によるヨガポーズ各種。結果筋肉疲労軽減、血行促進効果絶大。気持ちよく安眠に感謝で〜す。 翌日は白鳥小屋の屋根の上に梯子で上がり1畳半あまりの展望台からの日本海遠望にようやくここまで辿り着いたちょっぴりの安堵感も。この後の激下りも日本海目指してゆけゆけ、どんどん、やれば出来る!  太平洋海岸沼津から〜富士山〜日本海岸まで横断山行達成なさった吉野様おめでとう御座います。 長靴を履き通され4日間完歩の岸田様に驚嘆。 

「なでしこ山友ガール11」に、少数派のボーイ陣は、控えめで物静かな中島様 金本様(?) 柴垣様 お世話様になりました。 マージャン同好会への入会お誘い下さった吉津様ごめんなさ〜い。事前学習必須条件はクリア出来そうにありませんので。 大谷様の頑張りもいつもながらすご〜い。お大事に。 長野様の荷物軽量化を見習わなくては。 河合様 東様お世話になりました。皆様との出会い触れあいの時間を心の箪笥に大切に収納させて頂き、折に触れて感激を再賞味させて頂きます。本当に有難うございました。

 京田辺山友会の更なるご隆盛と山友会員の皆様の益々のご健康を念じさせて頂きます。
 
 念願の栂海新道(白馬から日本海へ)
 山口博
 

栂海新道は橋本さんが歩かれた記事を「かんなび」で読んで是非歩いて見たいと思っていました。

その後20089月に東北の雨飾山に行った帰りに親不知海岸に立ち寄り栂海新道の登山口を見て、同行の大谷さんと“歩きたいね”と話して夢が膨らんで来ました。

今回の夏山例会に佐々木さんが計画して頂き直ぐに参加申し込みしました。

本当に実現する事が出来て佐々木さんに感謝!!です。SLを依頼され引き受けさせて頂きました。夏山集中登山の説明会に5コースで30数名の出席が有り最終3コース32名で、Dコースは14名で他に一般2名の参加が有り16名と成りました。

なんと女性が11名男性5名には驚きました。何時も例会は男性が圧倒的に多くて女性は男性の半分位ですが今回は逆転です。

 さて天気予報は長野、新潟地方は雨が続いて27日は100mmの集中豪雨でした。

前日に@コースの鈴木さんからもメールが入り、佐々木さんからも相談を受けましたが、日程を変えると休暇を取って参加されている方も居られるので全員が参加出来なく成るので、天気も徐々に回復しそうで雨を覚悟で決行する事になりました。

新田辺6時に出発し栂池高原スキー場には予定通り12時に着きました。ゴンドラを降りると雨が降り出して早速に合羽を着ての登山の開始です。雨も降ったり止んだりですが大きな雨もなく白馬大池山荘には1630分に着きました。30分後には@班も到着しました。山小屋は混んでいて4畳に6名で私達は4部屋に分宿しました。夕食はカレーでお茶も有りませんでした。食後は何もする事も無いので7時前から寝ましました。

7/30 3時に起きてヘットランプを着けて4時出発です。

歩き始めて30分位で明るくなり、今日の行程は10時間です。頑張ろう! 小蓮華山までは登りですが此処からは小さなアップダウンで道の左右は花!花!花!でガスで景色は見えませんが目を楽しませて呉れます。雪倉岳の山頂もガスの中です。目の前に雷鳥の夫婦が歩いています。カメラを構えるが中々旨く撮れない。

朝日岳山荘へ巻き道を行きましたが、此処は湿原で木道が続いていて殆どの方が1度は転がったのでは無いでしょうか?濡れていて登山道も滑りやすくて時間が掛かりました。湿原には花が咲き乱れて白い水芭蕉や

雷鳥(清水さん撮影)      紫のあやめ黄色のキンコウカなどが色鮮やかです。

朝日小屋に1550分に到着しました。朝日小屋は昨日と違い素晴らしい小屋です。

大きな部屋も私達で独占し広々としています。又夕食は素晴らしい、ネットで事前に写真を見ていましたが、正にその通りで、食堂の入り口で食前酒のサービスがあり5種類程の料理が並んでいる。山小屋でこんな食事は南アルプスの光岳から聖岳の縦走路で泊まった、茶臼小屋でマグロの造りが出て吃驚しましたが今回は2度目です。食前酒で出来上がり7時に早々と就寝。

夜中12時に目を覚ますと雷と土砂降りの雷雨で明日の天気が心配です。それからは眠れませんでしたが静かになり、雷も収まり雨も揚がった様でした。

7/31 3時に外に出てみると満天の星空です。部屋に戻り出発の準備です。

最所の予定は白鳥避難小屋まででしたが、小屋の女主人も“白鳥小屋まではとても無理”との事で16名のパーティで行動に時間が掛かるため栂海山荘に変更し,予定より遅れて430分出発しました。ニッコウキスゲが群生して登山道一面を黄色で埋めています。

また朝日岳への登山道からの雲海が素晴らしい。

今回初めての展望で朝日岳山頂からはこれまで歩いた雪倉岳やら白馬岳の展望を満喫しました。

眼前にこれから歩く栂海新道の稜線が続きます。稜線の登山道はアップダウンの繰り返しで、白鳥小屋までは無理と納得しました。北ノ股の水場で夕食の水を補給して登り1時間で栂海山荘に15時に到着しました。

無人の栂海山荘は綺麗な小屋で私達だけです。

協力金一人1,000円と毛布200円で持ってきたツエルト、シュラフカバー、マットなどは不要でした。

今回は男性が少なくて飲む人もK,K,Sさんの3人位で小屋の中も静かで夜の宴会も無く早々と7時に就寝しました。                    栂海山荘での夕食

8/1 小屋を4時に出発し白鳥小屋まではキツイ登りで4時間、途中の黄蓮山の水場で水を汲み朝食にしました。白鳥小屋930分に着きました。此処まで5時間半掛かりました。昨日はとても無理であったとて納得しました。

小屋の展望台に登り歩いてきた峰〃などを見ましたが日本海はまだ見えません。

CL佐々木さんから“此処からは携帯が繋がるので坂田峠までタクシーが来てくれるので疲れた方は言って下さい“との話しでしたが誰も手を挙げませんでした。

皆さん頑張るようです。此処まで来れば最後まで完歩したいですね。

さてこれからが大変で下駒ガ岳まで登り急降下です。登山道はぬかるんでいて滑りやすくて疲れは足には堪え、皆さんのペースも落ちやがて坂田峠に到着しました。

日本海が前方に見えますが、又此処からが大変です。尻高山、入道山を上り下りして峠を二つ越えて出発から10時間掛かってようやく親不知登山口に着きました。

全員で握手して荷物を置いて親不知海岸まで80m下り、海にタッチして厳しかった縦走が終わりました。

リーダーの佐々木さん色々ご苦労をお掛けしましたお世話様でした。                 

私の登山暦でも10指に入る厳しい縦走でしたが今は達成感に浸っています。

又一つ良い思いでが出来ました。

同行の皆さん有難う御座いました。

「なでしこ山友会イレブン」は凄い!

皆さんの根性に脱帽、敬服しました。

     
 キバナシャクナゲ  キヌガサソウ  朝日小屋に到着
     
     
 朝日岳への登山道からの雲海  ニッコウキスゲ  湿原に咲くキンコウカ
     
     
 雪渓を渡る  栂湖山荘での夕食  栂海小屋
     
     
 黒岩山へのキツイ登り  白鳥小屋  栂海新道登山口に着きました

栂海新道 登山道では雷鳥が迎えてくれた

  写真提供:山口さん